日本国内の長期金利の上昇を反映し、
日本のメガバンクが10年物の定期金利を
0.002%から0.2%に引き上げて話題になりました。
日本最大手のこの銀行における
金利の引き上げは、2011年以来12年ぶり。
私たちは、
金利が高くなれば、
円の価値も上がるのでは?
と思いがちですが、、、
実は、そういうわけではないようです…
藤井先生のお話を伺ってみましょう。
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from:国際政治学者・藤井厳喜
◾️日銀の金利1%容認
日銀の政策決定会合が10月31日にありました。
私が注目したのは10年物国債の長期債が
金利の1%超を事実上容認したということです。
「金利が上がっていくと、国債の値段が下がる
国債の値段が下がると金利が上がる」
ということで、
今までは、国債の値段が下がらないように
一生懸命日銀側が指し値オペまでしていました。
1%を超えそうになると無制限に国債を買い
金利を抑えつけようとしてきたのです。
しかし、
マーケットの動きというものは抵抗し難いものです。
今までは1%が死守ラインだったのですが、
今度は1%を目処にするとしました。
「目処とする」という表現は、
若干上回ることも容認するということであり、
長期金利が上昇していくことは防ぎようがない、
という方向に来ているということです。
日銀は、表向きは、
今までの金利政策を諦めたわけではない
と言っていますが、事実上の方向転換です。
市場の金利上げ、
そして日本国債の値下がりの動きに抗し難いというのは、
昨年の12月から出ているわけです。
◾️金利上昇と円安の同時進行
現在、日本の長期金利上昇と円安が
同時に進行しています。
必ずしもそうなるとは限りませんが、
債券相場を中心にしてみると、
金利が上昇するということは、
債券の値段が下がるということです。
既発債(既に出ている債券)の
値段は下がってしまうのです。
そうすると、その債券市場は当然売られます。
日本の国債を中心とする債券が売られる上、
外国から投資していた人が日本の債券を売って、
外国にお金を戻す動きになりますから、
当然、円安圧力になるわけです。
一般的には金利が高くなると、
その通貨が強くなると信じられていますが、
実は、これはほとんど迷信です。
他の要素ではそうなることもありますが、
債券市場を見た場合は、逆の力学です。
だから債券市場の力学で動く時は
金利が上がれば、その国の通貨は弱くなります。
金利が1%を超えることを容認したので、
円安が進んでいるというのは正しい訳です。
◾️債券市場の力学の正しい見方
面白いことに、10月31日の日経電子版には、
円安に関する2つの記事が出ていました。
一つは、金利格差理論を信じている記者が
日本の金利が上がったのに
円高にならないのは不思議だ、という内容。
もう一つは、債券相場のことを織り込んで
書いてありました。
つまり、金利が上昇することを容認する日銀だから
債券を売る動きが膨らんだ。
だから円安になった、と、
こちらは因果関係を正しく捉えています。
同じ日に日本経済新聞の電子版で
全く違った記事が出てるのですが、
後者の物の見方の方が正しいということです。
もっとも、これは他の通貨との相関関係もあるものですから、
必ずしも一国の金利が上がれば、必ずその通貨が安くなる、
あるいは下がれば必ず強くなるというわけではありません。
◾️今後も円安は続く
今回、1%越えを容認したので、
これが更なる円安圧力になっている、
これを押さえておいた方がいいと思います。
当局は150円台に入って円安に動くと介入はするでしょう。
しかし、この1年の動きを見てください。
150円台に入り介入して逆転させても、
結局またマーケットの力学で元に戻ってきています。
長期的に見ると、日本は貿易赤字が慢性化してきています。
その内、経常収支も赤字になるでしょう。
こういう国の通貨は安くなっていて、当然なんです。
そういう長期のトレンドもあるのです。
それに今は中短期で見ると、
金利もだんだん上がってきます。
インフレがありますので、上がってこざるを得ないのです。
そうすると通貨が弱くなる。
そういう動きが出てきています。
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