■断熱性を上げたら快適?そんなわけないでしょう!?
住宅において一つの性能の指標となっている断熱性。
これまでも法的な指標があり、ある程度の断熱性を確保した家づくりをしてきたのですが、2025年にその性能をさらに強化した新基準に移行することが決まっており、今何かと話題になっている性能値です。
最近少し興味があって色々な人に『断熱性を上げたらどういった家になると思いますか?』と聞いています。
ちなみにあなたの答えはなんですか???
この問いに対する一番多い答えは『快適になる』でした。
冬は暖かくて、夏は涼しい。
断熱性を上げた家に住めばそんな未来が待っていると思っている人が多いです。
しかし、それって本当でしょうか?
皆さんそれが真実なのか調べたことってありますか?
それともハウスメーカーがそう言っているから鵜呑みにしているとか?
では、答えをお教えします。
その答えは・・・
『快適にはならない』
です。
■少し考えれば分かることですが・・・
いやいやそんなことはないでしょうと。
流石に多くの人やメーカーは揃って快適になると言っている以上、それは流石に嘘でしょうと。
そう思われてもおかしくないと思います。
でも、『快適になる』は本当に嘘なので、しっかりと言っておきたいです。
これからその説明をするので、興味がない方はこの辺りでブラウザバックをしてください。
まず、断熱性って何かってところから話さないといけないので、簡単に断熱性を説明します。
断熱性とは、家の中の温度が屋根や壁、窓や床など、専門用語では外皮と言われるところから、熱が逃げていく量を計算したもので、数値が低ければ低いほど性能が良いと言い、UA値と言った言い方をします。
ここで重要なのが、その測定方法も測定結果も、家の暖かさのことは何も示していないと言うことです。
ただ、熱が家の中から逃げていく数量を見ているだけ。
その数値を持って家が快適とか、暖かいとか言っているのです。
ちょっとだけ違和感を覚えませんか?
『そんなことはない!家から熱が逃げなければ家は暖かさをキープできる!だから暖かい家に繋がるんだ!』
そう言う人もいるかもしれません。
しかし、なぜ熱が逃げていかないと暖かいのでしょうか?
・・・・それって関係無くないですか?
■暖かいのはしっかりと熱源があるから
家が暖かいと感じるのは熱源がしっかりとあるからです。
エアコンだったり、ヒーターだったり、ストーブだったり、そんなものが家の中を暖めてくれるから暖かいのです。
もしそういった物が無ければ、いくら断熱性の良い家でも寒くなります。
それは高校生の時に学んだ熱力学の話ですが、この話を高性能のポットを例に出す人がいます。
今の超高性能ポットって100℃のお湯を入れて蓋をしておけば、1日以上温度をキープをすることが出来ます。
だけど、数日たつとそれでも温度が下がり、10日も経てばほぼ常温です。
ちなみに魔法瓶は、住宅よりもはるかに高い断熱性を有しています。
それでも温度を保つことは不可能なのです。
■高断熱=長持ちで、高断熱=快適ではない
家も同じで、最初暖めてしまえば高断熱の家は長い時間暖かさをキープします。
それでも1日もすればほぼ常温に戻りますが、昔の家に比べたらかなりの長時間温度を維持することが出来るようになりました。
それでも魔法瓶と違い、暖房を切ったタイミングで温度は下がり始め、一晩も経てば外気よりは暖かいでしょうが、暖かいと言えるほどの温度ではないことが多くなります。
つまり断熱性とは、家の快適性を示す数値ではなく、暖房冷房の長持ち度合いを示す指標でしかないのです。
■実際に起こる室内温度差の悲劇
さて、ここまで聞いてもらえたら快適とは違うけれど、良いことではあるんだよねって思って頂けたと思います。
しかし、事実は逆です。
意味も無く断熱性を上げた家の末路は、悲惨そのものです。
それは歴史が物語っています。
■これまでの日本の家は断熱性はほぼ0に等しい造りだったわけ
それは昔の家を思い出してもらうと、分かりが早いかもしれません。
昔の日本の家、今なら武家屋敷とか、お寺とかが実際に体感出来るところですが、これらの共通することは、断熱性なんてほぼ0の造りをしていることです。
時代劇に出てくるような、所謂貧乏長屋みたいな家ならそうなっていてもおかしくないと思います。
しかし、武家屋敷やお寺などはかなりのお金持ちが住んでいた家などになります。
昔でも、断熱性を上げようと思えば上げられたので、断熱性が高い方が良いのなら、そういった家が多くあったはずですが、あまり見受けられません。
それを体現しているのが西欧の古い建物です。
建物を石造りにしたり、石膏や分厚い窓ガラスなどを採用し、断熱性が当時から高い建物となっています。
100帖くらいある大空間を、暖炉1台で温めていたと言うから驚きです。
なので日本もやろうと思えばやれたのです。
そちらが快適ならお金持ちは絶対にやっていましたよね?
でも、やっていなかった。
その理由は日本の気候にあります。
日本は四季があり、年中違った気温になりますが、湿度だけは年中高めの国なんです。
日本に住んでいると当たり前なので気が付けませんが、日本はかなりの多湿な国なんです。
それでも冬場は乾燥するじゃん!って言われそうですが、そんな状況でも日本の冬の湿度の平均は50%近くあります。
ところによっては10%台もあるので、全てがそうだとは言えませんが、日本は昔から湿度が高い国なんです。
なので、家を換気しないと湿気が溜まり、建物にも体にも、食物にも悪影響が及びます。
だから、日本の家は換気が出来ることが優先されたいえづくりとなっており、断熱性なんて気にもしない家が多かったのです。
■断熱性を高めて、換気をしないと悲劇の始まりに・・・・
そういった背景もあり、日本の家は断熱性をあまり意識していなかったのですが、ここまで暖房や冷房が当たり前になるとそうは言っていられません。
断熱性が低いと、いくら暖房を掛けても冷房をしても、止めたらすぐに寒く、暑くなってしまうからです。
また、その際に使うエネルギー量も馬鹿にならず、電気代が上がるくらいならまだ可愛い方で、国の電力政策も脅かす量になっています。
さらには、SDGsの観点からCO2の排出削減も叫ばれているおり、国は法的に断熱性を上げる政策をせざるを得ない状況になります。
なので、今の住宅は高断熱性の家が本当に増えました。
数年前には、『断熱性なんてただの飾りですよ、それが偉い人には分からんのです』なんて言っていた会社が、今では『断熱等級最高レベルが標準』なんてうたった商品を販売しているくらいです。
ただ、この加熱する断熱競争の陰で忘れ去られているのが、『換気』です。
日本は昔も今も高温多湿な為、換気をしないと湿気が家中に溜まってしまう構造なのは変わっていません。
しかし、断熱性をあげた家は、窓を開けた換気はもったいなくて出来ません。
折角断熱性を高めたのに、窓を開けたら一発でお終いですからね^^;
一応、換気システムが義務化されているので、それを動かしていたらまだいいかもしれませんが、多くの方はそれすら止めてしまいます。
理由は暑い寒いが入ってきてしまうから、暖房冷房がもったいないと思ってしまうからです。
そうなると、もうあなたの家は地獄への門をくぐってしまったのと一緒です^^;
家の中に溜まった湿気は行き場を無くし、それが集まり、結露となり出現します。
それが窓や壁ならまだいい方かもしれません。
一番大変なのが、壁の中に起こる結露や、床下の結露、収納の中、天井裏などみえないところに発生した場合は、本当に地獄へと進んでいきます。
見えないところだから、それが具現化した時は大体がもう手遅れだからです。
床下なら、カビだらけの空間にシロアリもいるかもしれません。天井裏だときっと木が腐っています。
壁の中だとあんなにこだわって決めた断熱材が、カビや湿気でボロボロです。
今の日本の家づくりって、こういったことがいつ起きてもおかしくない状況であると言えるんです!
■断熱性を上げるより換気性を上げよう
こういったことを防ぐためには何をしたらいいか?
それは断熱性よりも、換気性を上げることを心がけることです。
できれば、当社が採用している換気システムのように、調湿が出来るものがよりベターです。
でも、換気したら寒いじゃん!暑いじゃん!と言われそうですが、日本に住んでいたら気にしなくてはいけないのは、熱より湿気です。
私の知る限り多くの方が、湿気で悩んでいます。
『今借りているアパートがカビだらけで・・・』
『窓の結露が凄いんでこまめにとるんですけど、とってもとってもまた結露して・・・』
『服やタオルが、湿気っぽくなってしまって、なんならちょっと生乾き臭がする・・・・』
そんな悩みが多いと思います。
そういった人は、換気をより考えた家に住むことにしましょう。
もう一度言いますよ。
断熱性ではなく、換気性ですからね!!!
■そういう当社も実は断熱性が高い^^;
さて、ここまで話しを聞いてくれた人だと、きっと当社の断熱性は低いんでしょうね!って思われるかもしれません。
しかし残念ですが、当社の建物の断熱性のは高いほうです^^;
数字で言っても分かりづらいと思うので、等級で言うと、悪くても等級5、プランによっては等級6が標準的な仕様となります。
人によっては最高グレードの等級7を取りたいと言う人がいるので、そういった方々用への準備もあります。
おい!言っていることが違うじゃないか!と言われそうですが、当社は断熱等級はやはりあまり意識していないのは嘘ではありません。
それ以上に換気性能に意識をして、現状最高に近い物を提供出来ている状態です。
そして、断熱等級が良い理由は、当社の標準仕様だと勝手にその数値が出るからです、決して意識してそこにしようと言った感じで性能を決めていません。
当社の求めているのは、住んで頂いたお客様の未来の健康や、安心安全、お金に困らないことを住み続けて頂き、実感してもらうことです。
それを実現するために、あれやこれやと試作していったら、結果そんな性能になっているだけなんです^^;
でも当社の建物は換気性能をとにかく意識して造っているので、先ほど言った問題になりにくいです。
本当は絶対にならないと言っておきたいですが、コンプラ的な問題で言葉を濁してあります。
今回は以上です。
断熱性って言葉や耐震性など、色々な言葉を最近聞くようになりましたが、どれもしっかりと聞いておかないと逆効果になってしまうものです。
そこをしっかりと把握した家づくりをして頂ければ幸いです。
次回は、耐震性についてお話したいと思います。
では、また!