■ハウスメーカーに行く前に読んで下さい
当社でも採用している全館空調システム。
色々な方法で全館、家中を快適にするシステムで、ここ最近特に人気のある設備となっています。
しかし、人気のある設備ですが、クレームや問題が多い設備でもあります。
特に多いのが・・・・
『2階が暑くなる問題』
実はこれ当社でもたまに話に上がっていますが、他社さんでは結構な頻度で起きているとのこと。
当社のブログ記事でも、以前に書いた2階が暑い対策みたいな記事が、未だに人気の記事になっているくらい、関心があることになってしまっています。
ですので、今回はなぜ2階が暑くなるのか?その為の対策はどうしたらいいのか?
この2本立てでお送りしたいと思います。
■2階が暑くなるのは、自然なこと
まず、最初に共有しておきたい情報は、『2階が暑くなるのは自然なこと』という事実です。
特に今の家、高気密高断熱の家になるとそれが顕著に表れます。
理由は簡単で、小学生の理科でも習った物理現象。
『暖かい空気は上に行き、冷たい空気は下に行く』の物理現象によるものです。
全館空調システムで家中を冷やしたとしても、それでも完全に高温な空気が無くなるわけではなく、窓や外壁、家電や人間の体温などとして、常に家中に供給されています。
そういった空気は物理現象で、上に上に行きます。
その空気は最初は天井に溜まり、吹き抜けや階段などを通り、2階へと運ばれます。
その結果、2階が暑くなるといった現象が起こります。
なので、いくら全館空調システムを使っていたとしても、2階が暑くなるのは自然現象として、当たり前なことになるんです。
■温度差は実はそんなにはないことが多い
物理現象で2階が暑くなると言いましたが、実際にそういったお宅に伺って室温を図ると、実は1階とそう変わっていないことが多くあります。
イメージで言うと、1階の温度が26℃の時、2階の温度が28℃くらいの状態です。
確かに28℃だと、人によっては暑いと感じる温度ですし、1階の26℃は快適な温度なので、実際の温度差以上に差を感じ、余計に熱く感じてしまいます。
でも全館空調って、全部屋快適ですよって言われて導入したんだから、これじゃークレームだ!
そんな気持ちも分からないでもありませんが、ある程度の許容範囲があると言うことはご理解頂ければと思います。
実際に当社の展示場も、他社さんの展示場も、全館空調があったとしても、数℃の温度差は各部屋にあります。
それは、間取りもあるし、窓の配置なども関係するので、どうしても起こってきます。
しかし、それでも快適だよね?って体感をして頂いて商売をさせて頂いております。
■一番の原因は『間取り』
温度の性質の問題もありますが、実際に当社も数多く施工してみて結論を出したのが、『間取り』でした。
当社は何件も施工しているうちに、全館空調の効果がとても高い家と、逆に低い家があることに気が付きました。
どの家もデータ上は問題ない家ばかりなのですが、明らかに差があります。
基本的に展示場では、そんなに室温の差が出ないのですが、お客様の家だと出ることがある。
そういったデータをまとめて見て、出てきた結果が『間取りの影響』です。
全館空調の効果がしっかりと出ている間取りと、出ていない間取りがはっきりとしてきたのです。
色々な全館空調があるので、その機械や性能によって違いがあるでしょうから、これが全てだと言いませんが、当社の使っている機械や性能だと、『吹き抜け』の有無と広さ、位置がとても重要であることが分かってきました。
特に当社の家の場合、吹き抜けが重要です。
吹抜けの位置は出来るだけ家の中心部で、そして2階の廊下と面していることが重要です。
こうすることで2階に付けた6帖用のエアコン1台だけで、島田にある展示場は、家全体60帖以上の空間を冷やせています。
しかし、全く逆に吹き抜けが無い場合は、2階が暑くなる傾向が強くなります。
これも間取りによるのですが、極端な例だと1階に比べ3℃や5℃も室温が違うこともありました。
そういった家はエアコンを使い、調整してもらいます。
他にも、西側や南側に、多くの窓や部屋を用意した家や、軒が全くない家、また家を細かく仕切って部屋を増やしている間取りなどが、夏場に暑く感じる家となる傾向が高いです。
特に、去年や今年の夏は異常なほどに高温の日が続くので、余計にその傾向が強くでています。
逆に曇りや雨で、気温が落ち着いている日だと、まったく温度差が無かったりしますので、それだけ今の気温が異常であると言えます。
特に家の打ち合わせの際に、自分で間取りを作ったり、ビルダーの提案してきた間取りを作り替えた方などは、要注意です。
ビルダーはある程度そういったことを想定しているので、ある程度は対応している間取りを提案しているはずですが、自分で作ったりした場合は、そういった計算が出来ていません。
それでもその間取りを計算すべきだ!と思うかもしれませんが、実際に計算はしているのですが、データでしか把握が出来ず、今回話したように、ある程度のことは実際に住んでみないと分からないと言うのが今の建築の限界です。
その理由は、間取りだけではなく、窓の性能や断熱の性能、立地による熱の具合や、生活のスタイル、また温度の感じ方の個人差などもあるので、中々に難しいことでもあります。
■そういったことへの対策はどうしたら良いのか?
いくつか原因を上げてきましたが、ここからはその対策を書いていこうと思います。
■対策1、 暑い空気を強制的に1階に送る
まず物理的に暑い空気が上に溜まることで、暑くなることを防ぐ方法です。
その一番の方法は『強制的に暑い空気を1階に送る』です。
例えば、吹き抜けがある家なら、シーリングファンなどを利用して暑い空気を1階に送ります。
吹抜けが無い家なら、階段から強制的に送るでもいいかもしれません。
そうすることで、2階の熱い空気が1階に行くことで冷やされます。
1階が暑くなってしまうかもしれませんが、それも時間の問題ですのでご安心を。
2階の熱い空気は冷やされますが、それでも熱はあるので、1階よりも熱い空気は絶対に2階に上ります。
しかし、この空気は1階で冷やされている空気なので、強制的に送った2階の空気よりは涼しくなります。
でも、まだ1階よりは熱いので、2階に溜まりますから、それもまた強制的に1階に送ります。
シーリングファンを付けていれば、その循環がずっと続いていきますので、ある程度すると1階と2階の温度差が少なくなってきます。
それでもやはりまったく同じは無理ですが、温度差はかなり解消されます。
また自然と空気の循環で流れが出来ますので、その静かな風のお陰で涼しく感じる効果も得ることが出来ます。
■対策2、 カーテン、シャッターを上手に使う
次の対策として効果的なのが、カーテン、シャッターなど、窓から入る熱を防ぐ方法です。
今の家の窓は、昔と違いかなり高性能になりました。
しかし、それでも今の高温には勝てず、窓からかなりの熱を家に伝えてしまっています。
実際に窓メーカーの調べた情報によると、家の外から入ってくる熱気の7割が窓から入ってくるようです。
残りの3割は、屋根や外壁、換気システムによるものなどとなり、正直微々たるもののようです。
なので、窓から熱をどう伝えないかも、この暑い季節を乗り切る方法となります。
その為に有効なのが、カーテンやシャッターです。
シャッターは昼間に使うと、部屋を暗くしてしまうので、嫌がる方も多いですが、カーテンならそこまで暗くならず、また費用も安く設置できるので、おススメの対策法です。
特にカーテンでも、断熱、遮熱と言った効果があるカーテンや、これも同じく断熱、遮熱の効果があるレースカーテンと組み合わせることで、より断熱の効果が得られます。
そういった物がないし、買うお金もないと言う人には、段ボールで窓を室内側から覆うといった対策もあるみたいです。
ただ、見た目がね・・・^^;
■対策3、 実はこっちの方が大事!?湿度調整
次の対策は温度の対策ではないのですが、暑い空間への対策として有効な方法として、湿度対策を紹介します。
ご存じの方も多いでしょうが、同じ温度でも湿度が異なると体感温度は全く異なります。
例えば、27℃の気温の場合、湿度が80%以上もあると蒸し暑くて汗が出てくる温湿度となります。
しかし、同じ27℃でも湿度が50%台の場合、人によっては肌寒いと感じる人も出てくるくらいの環境となります。
熱いと感じる場合、どうしても気温にばかり目が行きますが、実は湿度もかなり重要なファクターとなっているんです。
なので、暑いと感じた場合、温度も重要ですが湿度も合わせて見るようにしてみてください。
とは言っても湿度計なんて家に無いことが多いと思いますが、今では100均でも購入することが出来るので、気軽に買えるようになりました。
ちなみに湿度も空気よりも軽いので、2階に溜まる傾向があります。
2階は熱も溜まるし、湿度も溜まるので、余計に暑く感じてしまうんです^^;
もし、家の湿度が高かった場合、1階は冷房、2階は除湿のようにして、家全体の温度と湿度を調整すると、それだけで暑さを感じなくなることもあります。
■対策4、 サーキュレーターを上手に使う
次に間取りの対策です。
先ほど挙げたように、間取り上どうしても暑くなってしまう家の場合、サーキュレーターを上手に使った対策があります。
間取りの影響で、各部屋が暑い場合でも、廊下や階段近くでは、涼しい空間になっていることがあります。
その位置から、強制的に部屋に空気を送り込むことで、暑さを解消しようといった方法です。
当然涼しい空気が入ってくるので、涼しくなるのですが、それと合わせて、部屋に停滞している暑い空気を追いやることも出来るので、より部屋の熱を無くすことが出来ます。
サーキュレーターは今では家電屋さんなどで、気軽に買えますので、予算や家の規模に合わせて買ってみてはいかがでしょうか?
■対策5、 部屋のドアを開けておく
これも間取りの対策への一環なのですが、2階が暑い家はどうしても熱がこもりがちで、特に空気の循環が弱いところにこもりがちです。
その症状として、2階の廊下はそんなに熱くないけれど、部屋に入ったら暑いなんてことが多々あります。
その対策として、人がいない時や、いる時でも問題ない時は、部屋のドアは開けておくことをおススメします。
そうすることで部屋に熱がこもることが少なくなり、暑さの解消に繋がります。
でも、開けっ放しなんてプライバシーが・・・
なんて人には、これも100均で買えますが、ツッパリ棒とレースのカーテンを組み合わせ、ドアに設置をすること、簡易的に目隠しを造ることが出来ますので、そういった対策をしてみるのはいかがでしょうか?
■対策6、 間取りづくりをもう一度考えてみる
これはこれから家を建てる人に向けての話です。
これから間取りを作り、全館空調が欲しい場合は、その旨をビルダーさんにしっかりと伝え、しっかりと効く間取りの作成をお願いしてみることをおススメします。
自分の理想の間取りとは異なるかもしれませんが、相手の方が経験も実績もありますので、快適な空間を作ることに関して、お任せすることで間違いが少なくなります。
あと、これは最近の流れと流行りに関することなのですが、今の流行りの間取りって実は全館空調向きでないことが多いです。
その理由は、以前の間取りと異なり、細かく部屋を仕切るケースが増えてきたから。
単純に同じ大きさの家だったら、間仕切りが少なく、空気の流れがスムーズな家の方が、空調関係にはメリットがあります。
しかし、今の流行りの間取りは、ファミリークロークがあったり、パントリー、書斎に、サンルームなどの、そんなに広くない部屋が多く存在する間取りが増えています。
個人的にはその方が暮らしやすそうだと思っているので、そういった間取りを提案もしていますが、空調に関しては問題があることもあるとお伝えしています。
基本は快適に暮らせると言う条件の元、設計をしていますが、一般的な住宅のほとんどは全館空調が無い家で、ある家の方が珍しいのが現況です。
そういった環境で最適な間取りが、全館空調でも最適になるとは言い難く、こればかりは専門家に任せた方が良いことが多いです。
また全館空調との相性で言うと吹き抜けも大事です。
一般的な家だと、吹き抜けがあると、1階をいくら暖房しても2階に逃げてしまうし、その空間を使えば部屋が造れるじゃん?と言ったことから敬遠されがちです。
しかし、全館空調は家全体を空調するものなので、空気の流れがスムーズになるようにした方がより効果がでます。
そこも理解して採用不採用を考えたいですが、個人的な意見では無いと計画上無理かなとも思っています。
以上です。
今回は全館空調についてお話をしてきました。
正直、近年の超高温な夏への対策は中々に難しく、快適ではない全館空調の家が増えてしまっていますが、それでも対策をすることで多少の効果があることは実証しておりますので、今回の件を参考に少しでも過ごしやすい夏をお過ごしください。
それでは、また!