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【店長流】

記憶に残る契約をご紹介  #店長流
記憶に残る契約をご紹介   #店長流
■今でもウルッと来ちゃいます





最近、色々な方とのご契約までのなり染めなどとお伝えしていましたが、これを読んでいたお客様から、一番記憶に残っていることって何?紹介してよ。


っと言われましたので、今回はそれを書いていこうかと思います。


いつも通り長文になりますので、心してお読みください。




■生まれて初めてのご契約




私がこの業界に入ったのは20代の後半。


うちの奥さんの実家が工務店を経営していたことがきっかけでした。


結婚当初はその当時の会社にそのままいるつもりでしたが、60を過ぎた義理の父が頑張っていること、また後継者がいないこともあり、自分が役に立てるのなら、そんな程度の軽い気持ちでこの業界に入ってきました。



ですので、当然私は素人でした。


建築の勉強もしたことはないし、そういった職に就いていたことも無い。


また、父の工務店はお世辞にも大きい会社とは言えない会社で、教育制度なんてものは何一つありませんでしたから、全てが手探りでの作業になっていました。


父も昔の人で、教えることはせずに見て盗めみたいな人だったので、余計に苦労をした記憶があります。



そんな私もようやく業界の頃が分かり始めたころ、生まれて初めてご契約をして頂いたのです。


今回の記憶に残る契約は、この初めての契約です。





■ミスや間違いの連続




なんだかんだでご契約を頂いたのですが、そこからは思い出しただけで、申し訳なくなるくらい、ひどい有様でした。


初めてのことなので、分からないことが多く、また当時は現場監督も兼任していたので、あれもこれもと作業をしていたこともあり、ミスや間違えの連続でした、


最初はまあまあと言ってくれていたお客様も、次第に顔が曇っていき、最後には『いいかげんにしろ!』とお𠮟りを受けるありさま・・・


ただ当時は謝るしかなくて、でもどうしたら良いのか分からなくて、でもやらないといけなくて・・・・、父に助けを求めても父も忙しかったので、出来る範囲でしか手伝いをしてもらえず・・・・と、そんな作業に追われ、毎日のように帰るのは、12時を回ってから。


時効なんでいいましたが、ブラックな環境で仕事をしていました^^;



それでも、ミスはするし現場もどんどん遅れるし、お客様は日に日に声が荒くなってくるしと、どこかに逃げたい、もう辞めたいなんてことを毎日のように考えていました。


自分にはこの仕事は向いていない、誰も自分を求めていない・・・そんな風に思ってしまっていました。





■とても怖かった引き渡しの日





そんな感じでも工事は進んでいき、引き渡しの日となりました。


当時の私はこんな風に思っていました。



『こんな家いらない!騙された!裁判だ!』



そんな風に言われると思っていたのです。


そうなったらどうしよう・・・


自分の収入で弁償出来るだろうか・・・・


裁判とかになったら父の会社に泥を塗ることになってしまう・・・


もう逃げたい・・・・


そんな心持ちだったので、引き渡しの日が怖くて怖くて・・・・



それでも少しでも良く見てもらいたい、少しでもいい気分で見てもらいたいと思い、その日は前日の夜から掃除をして、一睡もせずに次の日の引き渡しを迎えました。


そうでもしないと、気が狂いそうでいてもたってもいられなかったんです。


そして、運命の引き渡し当日、事態は思わぬ方向に進みます。





■出されたのは、裁判の紙ではなく・・・・・





引き渡し当日。


お客様が予定の1時間前に到着されました。


私はまだ来ないと思っていたので、スーツにも着替えず、私服のまま掃除をしていた時でした。


個人的には、ああまたやっちゃった・・・・また怒られるだろうな・・・って思いましたが、到着されたので出迎えをしないわけにもいかず、そのままの格好で出迎えました、怒られることを前提に・・・・



『あれ?もういるの?え?掃除してくれているの、ありがとう~』


そんな感じで、最近ではあまり聞けなかった明るいトーンでお客様が話してくれました。


私は怒られることが前提だったので、拍子抜けしてしまい、『えぇ・・・』程度の返事しか出来なかったのを覚えています。



『じゃあ、もう無理だね~、OO(奥様の名前)サプライズ失敗だよ』


そんな、感じで奥様と笑って話をしていられます。


私は、まったく意味が分からず、サプライズ?え?サプライズで怒られるの・・・?なんて思っていましたが・・・・・


すると奥様が笑顔で近づいてきて・・・その手には抱えるほどの花束があって・・・・


そして、こう言ってくれたのです。





■頑張っているの知っていたからね





『奥柿君ありがとう、奥柿君が頑張ってくれたからこんないい家が出来たよ。本当に嬉しい。男の子に花って嬉しくないかもだけど、これは私たちの感謝の気持ちです。』



そう言って私に花束をくれたのです。


でも、私には全く意味が分かりません。


今日は怒れて、こんな家いらないって言われて、でも会社の為になんとか引き受けてもらわないと・・・と思っていたので、全く意味が分からなかったのです。


なので、私は・・・・



『こんな花は受け取れません。色々と迷惑を掛けたし、ミスもしたし怒らせてしまったし、申し訳なくて僕にはもらえる権利はありません』


そう言ったのです。


すると、奥様は・・・・



『私たちはね、君が初めての契約だってことを知っていて契約したんだよ。だからミスや迷惑はある程度あると言うのは分かっていた。それでも多かったなって思ったけれど、それでも良かったの。


だって、それ以上に頑張っていたでしょ?


私たちは知っているんだよ、君が頑張っていたこと。


難しい問題があって、でもその日に調べて連絡しますって言って、深夜の2時とかにメールくれてたでしょ?


その他にも、休みの土日でも工事現場にいたの知っているし、近所の家にも頻繁に挨拶に行ってくれていたでしょ?


近所から評判良いんだよ、すごく丁寧で親切な監督さんだって。


私たちも新しくここに住む人だから、近所付き合いが不安だったけれど、お陰でいい印象で住み始めることが出来る。


そういったことも含め、私たちの家にこんなに頑張ってくれているんだって言うだけで嬉しかったの。


そりゃ、ミスが多かったからこっちだって感情的になって怒ったりしたけれど、それも君の為になればと思ってのことだたったし。


だから、君にはこの花束を受け取って欲しいの


これまで、ありがとう』



旦那様もうんうんとうなずいて話をきいてくれており、そしてもう一度私に花束を押し付けるようにしてきました。



そのあと、私は人生で初と言っていい程、泣いてしまいました^^;


怒られると思っていた緊張がほぐれたこと、自分のやってきたことが間違っていなかったこと、そして誰かの為に一生懸命になれば、誰かがそれを見てくれていること。


色々な感情が混ざって、涙が止まらなくて、でも嬉しくて、でも本当にこれで良いの?って気持ちも交じって、もう何がなんだか分からない状況でした。



10分以上泣いていたでしょうか、そうしているとうちの父も引き渡しだったので、現場に到着し、その状況をみて私がまた何かやったと思ったらしく、ひたすらに謝り始めて・・・でも、お客様はニコニコでと・・・意味が分からない、お引き渡しとなりました。



その後は無事にお引き渡しも終わり、その日は家に帰りました。


ちょうど家に奥さんがいたので、そのことを話すとまたあの時が思い出されて、涙が止まらなくて、奥さんもそれを見て同じく号泣でと、一生の記憶に残る日になりました。





■これまでは『ありがとう』と言われることが無かった




それまで自分の人生の中で、人からありがとうと言われることはほとんどありませんでした。


それは挨拶のような、軽いありがとうは言われたことがありましたが、本当に面と向かって言われるようなことはありませんでした。


特に社会人になってからはそういった機会はなく、仕事をしても、上手にすることが当たり前で失敗をしたら怒られる。


いくら上手にしても、何をしてもありがとうと言われることはない。


特にそれまでは工場で働いていたので、その商品が誰のために、誰が買うかなんてことを一切考えたことも無かったし、買ってくれた人から、ありがとうなんて言われたことは当然のようにありませんでした。



そんな人生だった私は、この一件からこの業界から離れられなくなってしまいました^^


あれだけ辛く、毎日のように逃げたい辞めたいと言っていた自分はいつの間にはどこかへ行ってしまったのです。


自分が頑張ることで得られるたった一言の『ありがとう』を求めて、今でも仕事をしています。



と言うことで、今日はここまで。


では、また!