■とあるお客様のストーリー
先日、10年前に家を建ててくれたお客様とバッタリお店でお会いしました(仮にSさんとします)
前の職場でのお客様で後任に引継ぎをしていたので気まずさもあるのかと思いましたが、本当10年ぶりに会う同級生のようなお話が出来ました。
お互い家族もいたので、数分の会話でしたが、その中で言われた一言が心に残っています。
それは、
『君のお陰で家が建てられて、今本当に幸せだよ。ありがとうね』
10年前の出来事でしたが、未だにそう言ってくれる方がいる。
感動でちょっと涙を流していたのは、ここだけの話です^^;
さて、そんなSさんですが、私が涙を流したのはちょっとした理由があるんです。
■出会いは少し衝撃的でした
私がSさんと出会ったのはちょうど10年前。
その時は前職場で、まだ住宅営業だった頃のことです。
確か私がお店のOPENに合わせ、外の掃除をしていた時に出会いました。
その出会いは衝撃的だったのでいまだに覚えています。
私がいたお店は路面店と言って、大き目な道路に面したお店で、掃除をしているとその道路にぽつぽつと人が歩いているようなお店です。
私は掃除をしながら、道行く人におはようございますと挨拶をしており、多くの人は返してくれたり、中には無視だったりとされていたのですが、その中の一人に凄い返しをされたのです。
私が『おはようございます』と言うと、その人はいかにも嫌そうな顔で『お宅、住宅営業なんてして恥ずかしくないの?転職した方が良いんじゃない?』
そんな初対面の人には絶対に言われることがないようなことを言われ、ちょっとびっくりしたのを覚えています。
しかし、私も捨てても住宅営業なので返す言葉で『そんなことないですよー、楽しく仕事をさせて頂いております』
なんて返しをしたのです。
すると、『まあ確かにそんなに嘘ばっかり言っていたら楽しいのかもな、人を騙す商売だもんな』
明らかに初対面の人に言う言葉ではありません。
当時の私は少し余裕があったんでしょうね、その言葉を聞いてなんかあったんだろうなって思ったんです。
なので、『失礼ですが、何か住宅営業と問題があったのですか?良かったら話聞きましょうか?』
そんな答えが出来たのです。
その方もそんな答えが返って来るとは思っていなかったのでしょう。きょとんとした顔をされて、少しの間私の顔をずっとみていました。
そして、『お宅、面白いね。これから時間もあるし、ちょっと話を聞いてもらおうかな』
そんなやり取りがあって、展示場に上がってもらいお話をさせてもらいました。
その方がSさんです。
■住宅営業はうそつきの集団だ!
『住宅営業はうそつきの集団だ!』
展示場で聞いた話は大体そんなことになります。
Sさんは結婚出産を機に家を建てようと思い、何社かハウスメーカーと話をしていたそうです。
Sさんの希望している土地は、相続が絡んだり、農地だったり、変形している土地だったりと、建築するには色々なハードルを越えないといけない状況だったとのこと。
正直難しいことだとは認識していたので、無理だと思っていた節もあったと言います。
しかし、どのハウスメーカーも『大丈夫、建てられます!』とのことで、それよりも住宅ローンの審査をしましょうとか、とりあえずプランを描きましょうとかで、ある意味Sさんが気持ちが良いように話を進めてくれていたとのこと。
そんな状況だったので営業マンを信じ、進めていくことに違和感なくいたそうです、
ですが、ローンが終わり、プランが終わり、見積りも終わり、契約も1社とはしたそうですが、その土地の問題は解決しないまま・・・
各社の住宅営業には任せて下さいと言われていたので、任せていたが一向に進まない状況に常に不安を抱えていたそうです。
そんな状態から約半年が過ぎます・・・・
そして、一社から『この土地では建築は無理です』と言われたのを皮切りに、一社もう一社と同じ回答が出てきて、最終的には契約をしている会社からも別の土地を勧められることに。
Sさんはその土地でしか建築をしたくないこと、また出来ないなら諦めるとも言っていたので、話が違うとのことで契約の破棄を求めたところ・・・
『それはSさんの都合での解約だから違約金が発生する、契約してから1か月内だったら無条件解約も出来たので、そういう意思があるならもっと早く言ってくれないと本来は解約すら出来ないことなんです』
なんてことを言われ頭にきたSさんは、裁判だ訴える!なんて言ったら、営業の上司が出てきて、今回だけは違約金なしの解約をOKすると言ってきたのです。
しかし、それまでに掛かった費用は請求させてもらうとして、Sさんからは頼んでもいない、地盤調査費やローンの書類作成費、調査に必要だった敷地の造成費などを請求されて、ほとんど違約金みたいな金額の請求がきたとのこと。
そんなものはSさんから頼んでいないし、営業マンが勝手に行ったことで費用は頂かないと言っていたから頼んだことだったので、Sさんの怒りはさらに上がっていきます。
とどめには営業マンが打ち合わせ議事録として、提出してきた書類が出てきて、それにはSさんから地盤調査を依頼されたことなどが書いてあり、それすらおかしい書類なのに、さらにはSさんが書いたことがない無いSさんのサインまであって、Sさんの怒りは再頂点に!!!
もう裁判だ!となったSさんはその書類の提出を求めたが、それは出来ないの一点張りで何も出来ない状況になってしまいました。
しかし、その1週間後に営業と上司が突然家に訪問してきて、頭を下げてきました。
内容は営業マンが全部嘘をついており、議事録も営業マンが苦し紛れに作ったものでサインも営業マンが勝手に書いていたこと。
地盤調査なども営業マンが勝手に指示をし、Sさんの了解を得ないまま進めていたことなどが発覚し、無条件の破棄で大丈夫とのこと。
Sさんはそれだけじゃないんじゃないの?って言ったのですが、上司から『それは脅迫ですか?』と聞かれ、これはきっとボイスレコーダーで撮っていると思ったので、もういいやって形で話をお終いにしたそうです。
後日、家の計画がここまで進んでいたので、他社でと思い話をしていた会社に行くと、営業さんにうちでは出来ないと言われ、あれだけ出来るって言っていたじゃん!って言ったのですが、無理な物は無理と言われ、ある意味門前払いに・・・
そんな経緯から、住宅営業を毛嫌いするようなになったSさんが誕生したのです^^;
■あれ?普通に建てられるかも???
そんな問題があってから1年くらいで私と出会ったSさんですが、今の話を4時間くらい私に話したらすっきりしたのか、
『住宅営業でもこんなやつもいるんだなーはじめっからお宅に会えていたら良かったかもね』
そんな話も出来るようになりました。
私は冗談半分で『その土地を教えてくださいよー、私なら出来るかもしれません』
なんて言ったら、『そういうところが営業のダメなところなんだ(笑)、まあ、PCある?話のネタに教えるよ』
そんな感じで土地を教えてもらったのですが、なんだか見たことがある土地で・・・?
あぁ、半年くらい前に自社で建てた土地の近くなんだとなり、ある疑問が出てきます。
『Sさん、ここの土地って50戸連たんで駄目になりませんでしたか?』
『おおよく分かったね、市街化調整区域になるからって50戸連たん求められたんだけれども、どうしても繋がらないんだよ。
他の営業はそんなことすら知らなかったし、調べることすら出来なったんだよね(笑)』
『ですよね。で、多分ですがここ50戸連たん繋がりますよ』
『え?なんで無理でしょうよ、何社も見てもらってけれど無理だったもんは無理でしょ?』
『えっと、実は半年前にここに当社で家を建てたんです。この家を利用して、こう繋げれば・・・・・』
『本当だ!50戸いけるじゃん!え?これなら家建てられるの?』
『しっかり調べないとですが、多分いけますね』
『おお!凄いじゃん!じゃあ調べてよ!あ、ちなみに費用は・・・・』
『要りません(笑)』
『じゃあお願いするね(大笑)』
ちなみに50戸連たんとは、市街化調整区域内に家を建つ際の制度の一つです。
建てる建物やエリアによって異なるのですが、このSさんのエリアだと、建てる予定の家から50m以内に家があって、さらにその家からも50m以内に家があり、さらにさらに・・・・とそれが合計50戸繋がらないと家を建てては駄目だってルールがあります。
簡単に言うと、市街化調整区域は元々家を建ててはいけないとしているエリアで、それを条件付きで許可してもらうのですが、エリアで先ほどいった50m以内に家が無いような言い方悪いですが、そんな不便なところにわざわざ家を建てる必要ないよね?ってことで、許可がされないってルールがあるんです。
Sさんの場合は、たまたま当社が建てたお家でその50戸のラインが繋がることが出来るとなって、家を建てられるかも!っとなったわけです。
■結果は『合格』
そんな感じでしっかりとした調査を開始し、約1か月後・・・・結果は合格^^
Sさんの土地で建築が可能であることが分かりました。
早速Sさんに報告したら、Sさんは大喜び^^
私が『Sさんおめでとうございます。これでどのハウスメーカーでも家建てられますよ。良かったですね。』
と言うと・・・・
『何言ってんの。お宅で建てるに決まっているじゃない!水臭いこと言わないでよ。住宅営業は未だに信用しきれないけれど、お宅は信用できる。これからもよろしくね』
そんな流れで住宅検討が始まり、ご家族も交えて穏やかな検討が進み、無事ご契約と着工へ^^
市街化調整区域での調整や、農地での調整も絡み、着工まで半年くらい掛かりましたが、出会ってから1年後にはご入居へ。
そして10年後に至るわけです。
■家を建てることが目的なのか、家を建てることで幸せにすることが目的なのか
実際、今回のSさんを担当したような営業マンってかなり多いと思います。
それは営業マンが悪いのかもしれませんが、そういったことを会社全体で指示していると言う事実もあります。
自社で出来るか分からないけれど、それでも他社に行かせるな!
そんなルールを未だに多くの会社が、営業マン教育として教えています。
今回もそんなルールの元に行われた営業活動でしょうが、個人的にはかなり寂しいものを感じます。
そんなルールの元で仕事をしていると、住宅営業として家を売ること、建てることが目的になってしまっている人が多くなってしまいます。
本来は、それは目標かもしれませんが目的ではないですよね?
本当の目的は、
『家を建てることで幸せになる人を増やすこと』
これが住宅営業の本来の目的のはずです。
それを会社の方針で見失うことなく続けられること。
簡単そうに見えて結構難しいことです。
しかし、自分はそういった営業でいたいと思っております。
以上です。
今回は懐かしさもあり、こんな記事を書かせて頂きました。
家を建てた人、皆に何かしらの物語があります。
今後はそんな物語もお伝えできればと思います。
では、また!