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【店長流】

どんな家?ではなく「どんな暮らしを?」を考えましょう SNSが招いた悲劇の家づくり #店長流
どんな家?ではなく「どんな暮らしを?」を考えましょう SNSが招いた悲劇の家づくり #店長流

■SNSが完全に悪いとは言いませんが・・・・


「洗面化粧台はこんな感じにしたいのですが・・・・」


「キッチンはこんな感じのものが良いです・・・・・」


「食洗器はフロントオープンタイプが良いです・・・・」



私は住宅業界に約20年携わってきました。


その間に世界がガラッと変わり、本は売れなくなり、あれほど怖がられていたネット通販も今では当たり前に、TVよりもネットの情報の方が正しいとされ、携帯電話からスマホに変わり、毎年上がるはずだった給料は上がらないのが当たり前になってきました。


その中で最も変わったのはスマホでの情報収集ではないでしょうか?

一昔前は情報を集めると言えば専門書や専門雑誌、住宅で言えば見学会や展示場への訪問でしたが、今では全てがスマホで手に入ります。

時間も労力もお金も掛からずに情報が手に入るので、とても便利な世の中になりました。


しかし、その反面失ったものがあります。

それが今回の議題にある「どんな暮らしを?」から「どんな家へ?」への変換で、本当に欲しい家が見えづらくなったことです。

これは本当にここ数年特に感じています。



■「どんな暮らしを?」が大事なはずなのに・・・・



「どんな暮らしをしたい」が家を建てるのに本当に必要で、その為に建てるのが本来の考え方です。

それが叶わないのであれば、何千万円もの借金を背負って家は建てるべきではないです。

自分がしたい暮らしが叶わないのに、何千万円の借金を返し続ける人生って流石にきついですから・・・


しかし、ここ数年はその意識がとても希薄になってしまっています。

その原因の一番が「SNS」だと思っています。


特に画像や動画に関するSNSが問題です。

難しい用語ですが自己承認欲求といって、SNSでいいねをもらうために普段しないことをしたり、お洒落なお店に行ったり、海外に旅行をしたりなどをし自分の価値観を他人の評価で満たそうとする人がとても増えました。

そういったSNSを見たらそんなことを目的とした画像や動画であふれています。

本当は質素でなるべく目立ちたくないなんて生き方をしている人でも、お洒落な画像などをUPし、大勢にいいねされ、この欲求が一度満たされると生活がガラッと変わり、少しでも目立ちたい承認されたい人に変貌することなんて当り前になっています。


そうなると、こういったSNSのサイトでは実際に良いものではなく、人に承認されるものがもてはやされ、そういったデータがどんどん蓄積されます。

そういったデータを見続けることによって、自分もそういった物が欲しくなり手に入れる、誰に認められる分けではないですが、そうすることで自己承認欲求を満たそうとしてしまいます。

SNSでいっぱい承認されているキラキラしている人達になれるわけではないけれど、同じものを手に入れた自分は間接的に人から承認されていると思えるからです。


それが住宅にも波及をしています。

試しにSNSで「住宅」とか、「オシャレな家」とか検索してみてください。

本当に煌びやかな画像や動画が溢れています。

そういった物を見ているとそう言った物が欲しくなる。

それはしょうがないことですので、誰を責めるわけでもありません。



■問題なのは「欲しい!」が先行してしまうこと



しかし、ここで問題なのはそういった物を見て「欲しい!」が先行してしまうことです。

冒頭にもあったセリフで「洗面化粧台はこんな感じで・・・」みたいなことを言ってくる方が増えました。

それが望んでいる暮らしに合う物だったら良いのですが、実際にお話をしているとそうでない方の方が多く見受けられます。


例えば洗面化粧台での話ですが、5年程度前にこんな話がありました。

その方は一人暮らしの方で、新しい家も一人暮らし用のものを望んでいました。

ですがその方が希望されていた洗面化粧台があると言って、SNSの画像を見せてくれたのですが、それがツインボールと言って、洗うところが二つある洗面化粧台でした。

別に洗面ボールが2つあっても問題はないですし、確かに画像を見た感じはとてもオシャレな画像でしたが、その方にとってはほぼ使わない状況であるのは確かです。

さらにその方は一人暮らしの為に住宅に予算をあまり掛けたくないとして、色々な設備や性能などを省略している方でした。

なので私は「ツインボールだと費用も上がりますし、使用頻度も少ないと思います。単純に大きくなるのでスペースももったいないですし、物置も欲しいと言っていましたよね?シングルボールでも似たようなデザインは出来ますのでそうしましょうか?」

と尋ねたのですが、答えはNo。


理由を聞くと、お洒落なことも大事だが、SNSではボールが二つあった方が便利だし、使い勝手がいいと書いてある。

その他にも便利と書いてあるし、同じような意見の人が多い。

だからそこはツインボールが良いとのことでした。


ただ、私がその画像やコメントを見ていたところ、明らかにその良い意見はファミリー層からの意見。

家族が多いから朝助かるとか、部活で汚れた服を付けおきしておけるから便利などの意見が大半。

そのことをさりげなく伝えも、欲しいの一点張りになっていたので、そのお家にはツインボールの洗面化粧台が設置されました。

オプションとして確か20万円くらい掛かりましたが、引き渡し当初は喜んでもらえていました。


その次の年のことです。

1年点検で伺った際、その洗面所を見るとなんと半分が服やタオルの置き場になっていました^^;

話を聞くとボールは一つしか使わないし、物を置けるスペースが欲しかったから、住んでしばらくしてからはもうそういう使い方をしているとのことでした。

それを聞いて思うことはありましたが、笑顔でそうなんですね^^っていうことがせいいっぱいだったです。


こういったケースが大なり小なり多くの家であり、やはり「欲しい!」が先行してしまい、盲目的になってしまったのが原因でした。

これがSNSの悪いところだと思います。

オシャレな画像をUPしている投稿者と、それを見る側が同じような境遇や環境なら良いのかもしれませんが、そういったケースはレアであり、多くの方には必要のないものなのではないでしょうか?



今回のケースは住宅の予算からしたら、たったの20万円程度の被害でしたが、実生活で考えたら20万円なんてかなりの大金です。

そういった冷静な判断を出来なくする、それがSNSの悪いところではないでしょうか?



■事例2  タイル張りや豪華絢爛な設備の家を希望され綺麗なSNSに踊らされたお客様



次の事例は外壁を全面タイル張りにすることを希望されたお客様です。


この方もSNSを見てその結果外壁をタイル張りにするのがメリットだと位置づけ、その施工を求めらえていました。

しかし、知っている人も多いと思いますが、タイル張り施工はかなり費用が掛かり、当初いた会社では400万円程度のプラスオプションでありました。

かなりの高額であることや、そのお客様の家族構成や収入なども含め考えた結果、私は考え直すことをおススメしたのですが、それでも答えは変わらずでした。


そのお客様の理論ではタイルはメンテナンスが必要無く、最初は高いかもしれないが、アフターメンテナンスが格段に安くなる。

物持ちも良いので、最初にお金を払うことはなんの問題ではないとの答えでした。

しかし、実際にはそういったことよりもデザイン的な物が主らしく、奥様が何を言ってもこの外観が良いと言う状況でした。

どちらかと言うと、お客様が言っていたメリットは自分や家族を言い聞かせるための口実だったのかな・・・・


その他にも色々な設備を要求されており、数々の画像を見せてもらいました。

その結果、出てきた金額はかなりのもの^^;

このご家族が求めていた暮らしは、親からもらえた土地に家を建てることで、今のアパート代よりも少ない支払いでお金に余裕をもって暮らせること。

しかし、金額はアパート代よりも月々4万円は高くなってしまうという結果に・・・


奥様や親御さんは静止していたみたいですが、お客様は止まらず一生に一回なのに妥協はしたくないとのことの一点張りでした。

結局はそうこうしているうちに、当社では施工が無理な金額になってしまったので、そのお客様とはそこでお話を打ち切りました。


その約2年後、展示場にそのお客様が来店されて相談したいと言ってこられました。

もうすでに家は建てられているようで何の話だろうと思いましたが、その相談内容はローンの借り換えをしたいとのこと。


何でも借りた額が多すぎて、支払いに苦労してしまっている。

少しでも良いから毎月の金額を減らすことは出来ないかと言った相談でした。

そういった話なら建てた会社さんや銀行に相談したらどうかと言いましたが、建てた会社や担当はまったく相手にしてくれず、銀行も何もやりようがないとの一点張り。

それで困っていたところ、住宅ローンアドバイザーだった私のことを思い出してきたとのことでした。


私は住宅ローンアドバイザーだけの仕事は請けていないので、どうしたものかと思いましたが、これもご縁だと思い相談をうけたところ、驚愕な事実が発覚。

なんと毎月の費用が言っていたアパート代よりも6万円も高くなっていたのです^^;

正確に言うと、毎月が6.5万円だったアパート代が、住宅ローンは13万円程度だったのです・・・

収入的に少ない方ではなかったので、借りられる範囲ではありましたが、土地無しでここまでローンを組むのはちょっとやりすぎな収入でした。

私のところで話をしていた時は総額で3000万円程度だったのに、最終借り入れは4500万円になっていました・・・


これではさすがに苦しいでしょうと、そもそもなんでそうなったのかと話を聞いたら、建てた会社はSNSが充実していてどれも魅力的だったこと。

また担当との相性が良く、どんどん提案をされてそのどれもが良いので、ほとんど採用してしまった。


当初はローンが多すぎるかなって思ったけれど、自分くらいの年収の人ならこのくらい借りていると言われ、へんな安心感があり話を進めてしまった。

結局はほとんどが自分達では要らない物だったり、オーバースペックだったりしていて今では後悔しかない。

そんな家にこんな高額なローンを払いたくないと思って少しでも安くならないか考えている。

とのことでした。


もう済んでしまったことをとやかく言ってもしょうがないので、何とか少なくしようと頑張ってみたところ、何とか借り換えすることで毎月が5000円程度は安くすることが出来る条件があったのでそれを提示。

しかし、借り換えも何かと手数料が掛かり、約100万円程度の追い金になる状況だったので、少し考えますと言ってからは連絡が来なくなりました。


きっと諦めたのかなって思っています・・・・



■だからと言って見ちゃ駄目ではない



そんな大変なことが起きるからSNSを見てはいけないのかと言ったらそれは間違いです。

多くの情報が気軽に手に入るSNSはぜひ活用していくべきです。

しかし、その情報に踊らされることは無いようにしていかなくてはいけません。

多くの情報の中から自分達にあった、必要な情報だけをピックアップする。

ある意味そういった訓練をしないといけないのかもしれません。

じゃないと、本当に欲望や欲求を上手にSNSは掘り起こしてきますので・・・・



■見栄っ張りな方は本当に要注意!



特に自分が見栄を張るタイプの人間だと思う方は要注意です。

お隣さんや友人が3000万円で家を建てたなら、俺は3500万円だ!

なんてことを無意識に思う方は本当に注意が必要です。

そういった方はSNSの欲求に簡単に飲み込まれてしまいます。


SNSにある家や設備は本当に良い物です。

だからと言って自分に必要なものなのか?

予算を上げてまで必要になのか?

そんな感じで少し冷静になって考えて見てください。



■「どんな家?」ではなく、「どんな暮らしを?」



さて、今回の事例などでも分かったように、「どんな家?」を追い求めてもあまりいいことはありません。

これは普段でも言えることでしょう。

お家でとんかつを上げるのはスーパーで売っているとんかつ用のロースを買えば十分です。

それを「どんな家を?」精神で肉を考えたら、どこかのブランド肉で厚みも分厚く脂身も綺麗な物を・・・みたいになってしまいます。

たまにはそれも良いのかもしれませんが、毎回そんなことをしていたらお金がいくらあっても足りません。


住宅も同じで一生に一回のものだから!と思われるかもしれませんが、住宅は手に入れてからが本番です。

何年、何十年と暮らしくいくのに、一生に一回のスペシャルなものが毎日必要でしょうか?

自分の身の丈や生活にあった、最上のものではなく、最良なものを選ぶべきですよね^^


その為にはどんな家?ではなく「どんな暮らしを?」に焦点をあてて、その中で最良なものを選んでください。

ちなみに私は1年前に家を建てましたが、その時の「どんな暮らし?」は、明るくて家族皆が集まりやすく、暑い寒いに悩まずに、そしてお金に困らない。

そんな暮らしをするための家造りをしました。


皆さんも家族の分だけ思いがあるでしょうから、その思いを叶えられる家造りをしてみてください。

その答えはSNSにはありません。

その答えは皆さんの生活と将来の夢にしかありませんので、忘れないでくださいね^^


今回はここまで。


では、また!